第6話 大手仲介会社に相談してみる

数日後、顧問税理士とM&A最大手「全日本M&Aグループ」を訪問する。

都心の駅直結の立派なビルだ。

余談だが全日MAは社員の高収入企業ランキングでトップ常連。

さすがにいい場所にオフィスを構えている。

6畳くらいのエレベーターを乗り継ぎ高層階にあるオフィスに到着

受付嬢に案内され眺望が良い会議室で待つ。

ほどなく担当者2名が登場。

推定38歳のAさんと推定30歳のBさん。

思ったより若い方が担当されるようだ。


こちら側の情報は税理士が事前に説明済みなので、AさんがM&Aの大枠の流れを説明してくれた。

M&Aのプロセス

M&Aのながれ

①アドバイザーの選定

②売却する戦略を立てる

③企業の概要書を作る

④ノンネーム(匿名)で打診

⑤候補先と秘密保持契約締結

⑥詳細資料の提示

⑦トップ面談

⑧意向表明

⑨DD(デューデリジェンス

⑩最終条件交渉

⑪契約・クロージング

⑫PMI(統合プロセス)

 

という具合だ。

当たり前だが初めて知ることも多い。

私も面食らったがM&A業界は専門用語や横文字(英語)が非常に多いです。
それが公用語なのでブログでも専門用語を使いますが解りやすくリンクを貼るので参照にしてください。

長い道のりにも見えるが早いと3~4か月でクロージングまで進むようだ。

自分のいてる業界のM&A事情を聞いた。

「最近F社が買収に力を入れている」

「Z社がクロージング間際でディールが破断した」

など表には出てない裏話も聞けた。

自分が知らないだけで世間は脈々と動いているようだ。

 

M&Aの現状

大企業はもとより大手メーカーなどではM&Aは進んでいる。

ドラッグストアや保険代理店の業界ではM&Aでの統廃合は終わりつつある。

自動車メーカーではほぼトヨタグループ(スバル、マツダダイハツ、スズキ、日野など)で、日産、三菱はルノーグループ、唯一単独であるホンダもGMと業務提携している。

 

ガソリンスタンド業界では二十数社から、大手2社のエネオス、出光と中堅のコスモ、キグナス太陽石油でほぼ集約されている。



統合の波に乗れない会社は衰退し、強者はさらに強者と組んでパワーアップしていく。

あらゆる業界で諸行無常が繰り広げられている。

 

聞きたいことは聞けた。

次回のアポは取らないままにその日は帰った。

税理士と別れて、帰りの道中考えた。

私の引退と会社の成長。

両方手にするには戦略的M&Aは必須だと思えてきた。

 

第5話 M&Aの最初の相談は誰にする?

 

M&Aで売却を考えた時、皆さんなら誰に相談しますか?

前回のSさんはメインバンクの三友銀行でした。

でも取引銀行に話すと融資も引いてるし、変に勘ぐられても嫌だな。

 

私の場合、まず顧問税理士に相談しました。

税理士に聞くと、「顧問先で会社を売却した人はいてる」とのこと。

50代の夫婦が経営するインバウント相手のホテルに同業他社から買収のオファーが入る。

ホテル経営は順調だがとんでもなく忙しく身体が持たない。

夫婦で良く話し合い事業譲渡を決めた。

借入もあったがホテルの地価が高騰してきたこともあり返済してもなお十分な資金が残った。

今はたまに知人の仕事を手伝いをしながらゆったりと過ごしている。


「羨ましい・・・」

当時、忙しい真っ最中私は心からそう思った。

忙しいと字のごとく心が亡くなる。

そのくらい心身共に疲弊した時期だった。

 

ただ税理士はその件でも仲介はしておらずM&A経験はないようだ。

「参考までに一度相談にいきませんか?」と税理士が言ってきた。

 

のちに分かることだが税理士に相談するとほぼ「全日本M&Aグループ(仮名)」を紹介されるだろう。

 

業界最大手で「M&A界のアンドレ・ザ・ジャイアント」の異名を持つ。

 

ここは税理士協会と縁が深いようで税理士のファーストコールはここが多くなる。

もちろん私も全日MAの名前くらいは知っている。

たしかカンブリア宮殿に社長が出ていて興味深く見ていたのを覚えている。

 

私も「参考まで」と念押ししアポイントをお願いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第4話 M&A経験者の話を聞く

M&Aでいこう!」

 

そうは考えているがなかなか前に進まない。

日常の業務に忙殺されあっという間に一週間とか過ぎる。

2週間もたてば、その気も醒めてくる。

 

「やっぱ辞めるのもったいなくね?」

「次の事業で失敗したらどうしよう?」

 

出来ない理由がいっぱい出てきた(M&Aあるあるだと思う)

 

そんな時期に同業の先輩経営者が病気療養のため会社をM&Aで売却したと噂で聞いた。

まだ50代半ばと和解が療養に専念するため、事業譲渡を選択されたという。

 

ご無沙汰していたがお見舞いも兼ねて先輩経営者Sさんに連絡した。

もちろんM&Aの話しも聞きたかった。

「では昼食でも食べながら」とランチのアポを取り付けた。

 

翌週、ホテルの中華料理店でランチミーティング

数年ぶりにもかかわらずSさんは優しい笑顔で迎えてくれた。

 

思ったより元気そうで驚いた。

実のところ病気はM&Aの契約締結後には完治したらしい。

現在は趣味のゴルフと旅行、たまにフラッと仕事するというライフスタイルだ。

食事しながら興味津々でM&Aでの売却までの話を聞いた。

 

最初は人間ドックでガンが見つかり手術することになった。

その時に色々と考えたらしい。

会社のこと、家族のこと、自分自身の人生のこと。

 

本人曰く「病気で気が滅入っていたし、この仕事は子供には継がせたくない」

そういう考えに至った。

決め手は奥様の「今までもう十分頑張ったじゃない」の一言での決断だった。

 

あまり時間に猶予もなかったのですぐに動いた。

メインバンクの三友銀行に相談、ほどなくして同業大手からオファーがあった。

トップ面談で買い手の社長とも意気投合。病気のこともありトントン拍子で

話は進み契約締結に至った。

 

当初の半年ほど会長として月に2~3回ほど会社に顔を出した。

引継ぎも終わり引退したが、会社はなんとか伸びているという。

Sさんは「今後は投資でもしながらゆっくり考える」とのこと。

 

このSさんの話。

だいぶ端折っているがとても内容が濃いものだった。

自分の中でM&Aのビジョンが明確になってきた。

 

  ポイント! ・社長が次の世代に最善の状態で引き継ぐ
・スタッフの雇用は必ず守る
・売り手、買い手ともにメリットがある方法を探す

 

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第3話 引退する選択肢を考える②

残りの選択肢は、

 

3、M&Aで株式譲渡し大きな資本と組んでさらなる展開

 M&Aでうちを買いたいと思う会社があるか分からないが、大きな会社と

 一緒になることで得られるメリットもあるだろう。

 上場企業のグループ会社になったらスタッフも喜んでくれるのかな?

 よくM&A後に社長が抜けたあと、右肩下がりになるケースも多いと聞く。

 M&Aした後はどういう体制で会社を成長させていくのだろう?

 ただ興味はある!

 

4、このまま経営を続ける

 ふつうの選択はこれですね。

 せっかく立ち上げた会社だし、若いのに社長辞めるなんてもったいないしね。

 経営がうまくいってたらなおさらそう思う。

 しかし俺にはそれはナシだな。

 もっといろんなこと知りたいし、したい。

 今まで経営してきたの○○屋というカテゴリーだけで終わるのは嫌だ。

 

 

一長一短あるが現実的なのはM&Aかなと。

社員に全責任押し付けられないし、そんなの俺も気が気でない。

M&Aならば株式譲渡するので次の株主が資本の責任を持つし、

経営はうちの役員たちで責任を持つ、これがフェアだと思う。

資本と経営を分けるのも健全に思える。

 

 

よし、前に進もう。

 

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第2話 引退する選択肢を考える

なにか良い方法はないか?

今の自分に考えられる方法としてはこんな感じだった。


考えられる方法

  1. 社内スタッフに経営を任せて引退
  2. 外部から経営者を連れてきて引退
  3. M&Aで株式譲渡し引退
  4. このまま引退せずずっと経営を続ける

 

1.社内スタッフに経営を任せる

これが周りの賛同も得られ、しっくりくると思う。

しかし一社員が会社の全責任を一手に引き受けれるのだろうか?

経営のこと、運転資金の借入や債務保証。

もし売上が下がったら?天災等の不足に事態に見舞われたら?

そんな事になればほっとけないし、再び私が社長に戻らざるを得ないと思う。

 

知人のケースでこんなことがあった。

  知人のケース 60代になったG社長は右腕であるNo.2を社長にして、自身は会長として
自分の趣味や社会貢献に没頭する。
やがて新社長についていけない社員が出始め離職者が増える。
社内は不穏な空気になり、やがて業績は下がり始める。
見かねたG会長は再度社長に復帰。No.2はいづらくなり退社。
会社は元より悪い状態での再スタートとなった。
 
これは社内スタッフへの事業承継のあるあるパターンだ。
問題は新社長の器の問題と、経営はNo.2に任せたが資本(株式)は手放していないので
どうしても口を出してしまう。そんなパターンだ。

全責任を引き受ける新社長も大変だし、株式譲渡も考えると社員がそんな大金を支払えないのが現状である。
 
 

2.外部から経営者を連れてくる

世の中にはプロ経営者という人達がいて、一時的なつなぎ役やオーナーの代わりに経営をしてくれる優秀な人材がいる。

後継者の息子が若い場合などで登場する場合も多い。

アップルやマクドナルド出身の原田泳幸さんやローソンからサントリーに移った新浪剛史さんなどが有名どころだろう。
そこまで大物でないにしろ元上場企業の役員クラスなどは多くいる。

財務や労務、仕組みづくりは長けているだろうし、中小零細のうちに足りない部分でもある。
しかし年齢的なものも含めスタッフとの相性が悪かったり、思ったより仕事できない話もよく聞く。

株式譲渡も踏まえるとやっぱ根本的な解決にはならないな・・・


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第1話 事業譲渡を考え始める



「なんだか疲れたな」

そう思うことが多くなってきた。



20歳に自営業を始めて二十数年、がむしゃらに働いてきた。


その甲斐あってか会社は右肩上がりに成長を続けた。


スタッフも増え、東京進出も果たし、順風満帆の時、社長の私は多忙を極めていた。



当時の私は
44歳。まだまだ働き盛りの年代だろう。


しかし以前より50歳で引退したいと考えていた自分がいた。


決定的なことがあったわけではないし、引退したい理由は一つではない。

思い付きで考えている訳でもないし、その理由を人に言っても理解してもらえるとは思ってない。


ただ次のステージに挑戦したいという気持ちがあった。


今の事業を続けながら新しいことを立ち上げるのが一番良いのは分かっているが、

不器用な私には両立は難しく感じた。



今の事業を次の経営者に承継して、私は引退し次の新規事業に専念する。


そんな都合よくいかないとは思いながらも、なにか良い方法はないか考えてみた。

 

考えられる方法

  1. 社内スタッフに経営を任せて引退
  2. 外部から経営者を連れてきて引退
  3. M&Aで株式譲渡し引退
  4. このまま引退せずずっと経営を続ける

 

考え付くのはこんな感じだった。

 

さてどうするべきか?

 

 

 

 

はじめに

 

M&Aって大企業がするものだと思ってません?

ドラマでやってる外資系とかハゲタカファンドとか。

私もそう思ってました。

 

そんな私がM&Aで事業譲渡を考えた頃は

情報が少なくて苦労しました。

ましてや売り手側の経営者の情報はほとんどなく、

 

  • どうやって買い手企業を探すのか?

  • 誰に頼めばいいのか?

  • 費用はどれくらい?

  • いくらで売れるの?
  • 会社を売ったあと、会社、社員、経営者はどうなる?

など分からないことだらけでした。

 

欧米では企業の出口戦略はM&Aも数多く一般的になりつつありますが、

日本ではまだM&Aはネガティブなイメージも付きまといます。

 

また欧米では合理的な成長戦略のひとつと考えますが、日本では

「なぜ身売りしたの?」と、いぶかしがられたりもします(笑

 

M&Aという選択をして3年を過ぎた私の感想。

良いところ悪いところありますが、、、、

 

 

アリだと思います。

 

 

理由は、

  • 事業承継や事業再編でスタッフに自立心が芽生え成長する
  • 自分も次世代の経営陣と伴走しながらサポートできる
  • 個人戦からチーム戦に変わり会社に競争力がつく
  • 技術やものづくりを承継できる時間ができる

などメリットはたくさんあります。

 

このブログでは私の拙いM&A体験の中でやって良かったことや

悪かったことを備忘録として記してます。

孤軍奮闘している中小零細の社長さん今後の参考になれば幸いです。

 

 

第1話に続く