第20話 株式譲渡契約と表明保証

■二度目のデューデリジェンス

HRC社と基本合意契約を締結。
その後、私としては二度目のDD(デューデリジェンス)を行った。

HRC社からはファンドマネージャーのYさんとスタッフ2名、弁護士1名の4人だった。
以前のDD資料なども揃っており事前に渡している資料もあったので財務DD、ビジネスDDと順調にすすんでいった。
しかし法務DDで出てきた弁護士がヒアリングで痛いところをついてきた。
うちの商材の中で、広く一般的ではあるし非合法ではないがグレーなところにケチをつけられた。
もちろんそれで取り締まられることもないし誰もがやってることだが、買い手のファンドに雇われた弁護士は難クセをつけるのが仕事なのだろう。

結果それによる値引き交渉には応じなかったが、株式譲渡契約の中の表明保証に一文付け加えられることになった。そのことにより万が一、会社に損害があれば一部補償するような条項が付いた。しゃくではあるが仕方がない。

しかしこの条項がのちにファンドである彼らと弊社の首を絞めることとなる。
その後DDも無事終わり、ファンドが投資委員会で対象会社の承認を得るのをただ待つばかりとなりました。

■株式譲渡契約書

次のフェーズは契約書の作成

今回の場合は、SPA(株式譲渡契約書)、マネジメント契約書、株主間契約書、の3つ。素案が届いたのでうちの顧問弁護士に不利な条件がないかチェックをお願いした。

SPA(株式譲渡契約書)M&Aに関わるメインの契約書。
ここには株式譲渡の条件や競業避止のこと、次項に書いてる表明保証などが記載されている。競業避止とは辞めてからも同じ業種は3年間しちゃだめよということ。
同じビジネスはするつもりはないが窮屈なので期間は短縮してもらいました。

マネジメント契約書には「これからも2年間は会長として働くこと」と書いてあった。
これは話し合いの通りだった。
株主間契約書はお互い株主として協力して会社のために尽くそうとか、先述のタグアロング条項などが盛り込まれていた。

 

表明保証

SPAに書いてあった表明保証。
表明保証とは売り手が買い手に対して会社やDDの内容を保証すること。
売り手はデューデリジェンスなどで調査するがすべては把握できない。
そこで売り手は買い手に株式譲渡契約書で事業や財務、法務の状況にある程度は表明保証を行う。

まあ言ってることは分かる。
性善説に基づいて契約するんだし嘘ついてたら判らないこともあると思う。
ただ売った後に「表明保証している事由に起因して買い手が損害を受けたら弁済する」ってのは怖い。保証の期間や範囲、弁済の限度額をすり合わせ合意した。
これも後記するが相場を知ってると知らないでは大きな違いだ。

何度かのやり取りをして各契約書は完成した。
通常であれば調印式するのだが、スケジュールの都合で私が署名調印したものを当日中にFA佐山さんが先方に走り契約書をドッキングするというイレギュラーな方法だった。

という訳で事務的で淡々とした調印だった。
まあ契約書をかわしてすべてが終了ではない。
入金及び株式の譲渡が行われることで全ての手続きが終了となる。

次は2週間後のクロージングを待つだけになる。


佐山さん「いよいよ大詰めですね。」
そういわれて嬉しいが何とも言えない気分になる。

佐山さんとは約一年間近くではあるがディープに付き合ってきた。
M&Aを途中で止めたくなり佐山さんを会社に呼びつけたこともあるし、不安になり愚痴を聞いてもらったりもした。今となっては同志であり戦友だ。

夜の銀座で記憶なくすまで飲み明かしたこともあった。
面倒なやり取りも多く大変な作業ではあったがそれも終わるとなると何とも寂しい。

とうとう佐山さんからの卒業も近づいてきた。

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